吉村昭の小説
吉村昭の小説
吉村昭の小説が好きだ。
彼は何度も芥川賞候補になった作家だ。
芥川賞こそ受賞には至らなかったものの、他の多くの文学賞を受賞している。
吉村昭は、江戸時代から幕末・明治維新・大正・昭和にかけた時代のさまざまな事件を題材に、幅広い分野の小説を書いている。
その史実を尊重した歴史観には、ファンも多い。
僕は実はまだ「破獄」1冊しか読んでいない。
それがあまりにも面白かったので、この場で取り上げている。
吉村昭氏の小説はこれからどんどん読んでいこうと思っている。
読み終え次第、このページに追加してゆく。
それでは以下に、僕の感想メモを記す。
著者紹介:
昭和2年(1927)東京日暮里に生れる。
昭和28年学習院大学中退。
学生時代に胸部手術を受け、文学に志す。
丹羽文雄主催「文学者」に参加。
文学仲間の津村節子と結婚。
短編「透明標本」ほかが次々に芥川賞候補となる。
昭和41年「星への旅」で太宰治賞を受賞。
「戦艦武蔵」「陸奥爆沈」「関東大震災」など一連のドキュメントで昭和48年菊池寛賞。
昭和54年「ふぉん・しぃほるとの娘」で吉川英治文学賞。
昭和59年「破獄」で読売文学賞と芸術選奨を受賞。
幕末から現代までの記録文学に独自の境地を開き、多彩な執筆活動を続けている。
破獄 1983 新潮社
お薦め度 ★★★★★★★★★☆
内容紹介
昭和11年青森刑務所脱獄。
昭和17年秋田刑務所脱獄。
昭和19年網走刑務所脱獄。
昭和23年札幌刑務所脱獄。
犯罪史上未曽有の4度の脱獄を実行した無期刑囚佐久間清太郎。
その緻密な計画と大胆な行動力、超人的ともいえる手口を、戦中・戦後の混乱した時代背景に重ねて入念に追跡し、獄房で厳重な監視を受ける彼と、彼を閉じこめた男たちの息詰る闘いを描破した力編。
読売文学賞受賞作。
メモ
この小説には、2つの面での面白さがある。
1つ目は、主人公の脱獄手腕である。
さまざまな工具が無くても、身の回りにある何でもないものが、脱獄のための工具となる。
次々と沸いてくるその主人公の知恵には驚かされると同時に、面白くて読むのが止まらなくなってしまった。
2つ目は、人を改めさせることの難しさである。
刑務所の非人道的な処罰に反抗して、主人公は、刑務所をあざ笑うかのように脱獄を繰り返す。
しかし、人の温かさに触れ、最後には刑に服す。
その心境の変化に、人を改めさせることの難しさを考えさせられた。
とにかく面白い作品。
ぜひぜひ、お薦めする。