村上春樹の小説
村上春樹の小説
村上春樹の小説が好きだ。
読んでいるうちに、ごくありふれた日常に、新たな不思議な発見をしているような感覚になる。
そして引き込まれていく。
主人公を自分に重ね合わせる。
これは僕のことなのだ、と感じる。
彼は、比喩や形容が抜群にうまい。
こんな素敵な比喩を頭のどこから考え出してくるのか、と思ってしまう。
本の最後に解説が無いというのも、読者に対して、ただひたすら本文に集中して欲しいと語りかけているような気がして、なぜか嬉しくなる。
僕は、あなたに村上春樹の小説を読んでみて欲しいと思っている。
そのために、ここに、僕が村上春樹の小説を読んで感じた不思議な感覚を、メモにして置こうと思う。
このメモを読んで、少しでも村上春樹の小説に興味をもってもらえたら、嬉しい。
そして、興味をもってもらえたら、本屋でぱらぱらとページをめくってみてほしい。
きっと、一つの新たな楽しみが出来ることだろう。
著者紹介:
1949(昭和24)年、京都府生れ。
早稲田大学文学部卒業。
1979年、『風の歌を聴け』でデビュー、群像新人文学賞受賞。
主著に『羊をめぐる冒険』(野間文芸新人賞)、
『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(谷崎潤一郎賞受賞)、
『ねじまき鳥クロニクル』(読売文学賞)など。
風の歌を聴け
1979 講談社
お薦め度 ★★★★★★★★★★
内容紹介
1970年の夏、海辺の街に帰省した〈僕〉は、友人の〈鼠〉とビールを飲み、介抱した女の子と親しくなって、退屈な時を送る。
2人それぞれの愛の屈託をさりげなく受けとめてやるうちに、〈僕〉の夏はものうく、ほろ苦く過ぎさっていく。
メモ
処女作。
僕がはじめて読んだ村上春樹の小説であり、最も好きな小説の一つだ。
17歳の頃に読んで以来、10回以上繰り返し読んでいる。
物語は淡々と進む。
とっても素敵な比喩と、小洒落た、ノスタルジックな雰囲気が続く。
しかし、基本的には「何も起こらない」。
それでも、何か心を揺さぶる、圧倒的な力がある。
この小説に流れる雰囲気、スタイルへの憧憬が、僕の心を揺さぶるのだろう。
十代後半に、僕が何を感じていたのか、というところへ戻っていける一冊だ。
ページ数も少なく、1時間もあれば読めてしまうので、まだ村上春樹を読んだことが無い人には、ぜひ最初に読んで欲しいと思う。
1973年のピンボール
1980 講談社
お薦め度 ★★★★★★★☆☆☆
内容紹介
さようなら、3(スリー)フリッパーのスペースシップ。
さようなら、ジェイズ・バー。
双子の姉妹との〈僕〉の日々。
女の温くもりに沈む〈鼠〉の渇き。
やがて来る1つの季節の終わり――
メモ
「僕」の物語と「鼠」の物語が交互に語られる。
「僕」はピンボールマシンを探し求め、「鼠」は「女」と出会い、離れ、「街」を出ることを決心する。
この小説は、前作「風の歌を聴け」に比べ、物語としての特徴が強くなっている。
また、その後の村上春樹のテーマとなるものがいくつか現れる。
寂しさと、少しの新たな希望を感じさせるのは、別れと旅立ちの物語だからだろうか。
羊をめぐる冒険〈上〉
1982 講談社
羊をめぐる冒険〈下〉
1982 講談社
お薦め度 ★★★★★★★★☆☆
内容紹介
(上巻)
1通の手紙から羊をめぐる冒険が始まった。
消印は1978年5月..北海道発あなたのことは今でも好きよ、という言葉を残して妻が出て行った。
その後広告コピーの仕事を通して、耳専門のモデルをしている21歳の女性が新しいガール・フレンドとなった。
北海道に渡ったらしい<鼠>の手紙から、ある日羊をめぐる冒険行が始まる。
(下巻)
1982年秋 僕たちの旅は終わる すべてを失った僕のラスト・アドベンチャー。
美しい耳の彼女と共に、星形の斑紋を背中に持っているという1頭の羊と<鼠>の行方を追って、北海道奥地の牧場にたどりついた僕を、恐ろしい事実が待ち受けていた。
1982年秋、僕たちの旅は終わる。
すべてを失った僕の、ラスト・アドベンチャー。
メモ
この小説は、青春3部作の完結編と言われる。
この作品には明確なストーリーがあり、しかも少しミステリー風のところがある。
ストーリー構成としては、簡単に言うと探し物を見つけるということ。
「羊」が出てきて、とても不思議な世界観が広がる。
最後に「僕」はすべてを投げ打って「鼠」を救う。
読み終わったあとで、色々と考えさせられてしまう小説。
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈上〉
1985 新潮社
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈下〉
1985 新潮社
お薦め度 ★★★★★★★★★☆
内容紹介
高い壁に囲まれ、外界との接触がまるでない街で、そこに住む一角獣たちの頭骨から夢を読んで暮らす〈僕〉の物語、〔世界の終り〕。
老科学者により意識の核に或る思考回路を組み込まれた〈私〉が、その回路に隠された秘密を巡って活躍する〔ハードボイルド・ワンダーランド〕。
静寂な幻想世界と波瀾万丈の冒険活劇の二つの物語が同時進行して織りなす、村上春樹の不思議の国。
〈私〉の意識の核に思考回路を組み込んだ老博士と再会した〈私〉は、回路の秘密を聞いて愕然とする。
私の知らない内に世界は始まり、知らない内に終わろうとしているのだ。残された時間はわずか。
〈私〉の行く先は永遠の生か、それとも死か?
そして又、〔世界の終り〕の街から〈僕〉は脱出できるのか?
同時進行する二つの物語を結ぶ、意外な結末。
メモ
二つの物語の織り成す鮮やかな対比、いつもの小洒落た表現。
そして、非常に奇妙で不思議なストーリー。
僕は読みながら、結末が気になって仕方なかった。
二つの物語の関係は、終盤に明らかとなる。
「ハードボイルドワンダーランド」の結末は、悲しくなるほど穏やかで内省的だ。
一方、「世界の終わり」は希望へとつながっていきそうな描写で終わる。
読み終わった後、僕は長い間深い余韻に浸り、あれこれと考えを巡らしていた。
間違いなく、村上春樹の最高傑作の一つだろう。
ただ、非常に長いので、全部読み終えるとちょっと疲れる。
ノルウェイの森 上
1987 講談社
ノルウェイの森 下
1987 講談社
お薦め度 ★★★★★★★☆☆☆
内容紹介
限りない喪失と再生を描く恋愛小説。
暗く重たい雨雲をくぐり抜け、飛行機がハンブルク空港に着陸すると、天井のスピーカーから小さな音でビートルズの『ノルウェイの森』が流れ出した。
僕は1969年、もうすぐ20歳になろうとする秋のできごとを思い出し、激しく混乱し、動揺していた。
あらゆる物事を深刻に考えすぎないようにすること、あらゆる物事と自分の間にしかるべき距離を置くこと..。
あたらしい僕の大学生活はこうしてはじまった。
自殺した親友キズキ、その恋人の直子、同じ学部の緑。
等身大の人物を登場させ、心の震えや感動、そして哀しみを淡々とせつないまでに描いた作品。
メモ
この小説は、大ヒットしたためにご存知の方も多いかもしれない。
死、というとても重いテーマを扱っているように感じた。
描写はとても直截的で、妙なリアルさを覚える。
重いテーマであるのに、なぜかすらすらと読めてしまう、奇妙で不思議な小説。
ダンス・ダンス・ダンス〈上〉
1988 講談社
ダンス・ダンス・ダンス〈下〉
1988 講談社
お薦め度 ★★★★★★★★★★
内容紹介
『羊をめぐる冒険』から4年、激しく雪の降りしきる札幌の街から「僕」の新しい冒険が始まる。
奇妙で複雑なダンス・ステップを踏みながら「僕」はその暗く危険な運命の迷路をすり抜けていく。
70年代の魂の遍歴を辿った著者が80年代を舞台に、新たな価値を求めて闇と光の交錯を鮮やかに描きあげた。
「そんなに簡単に人は消えないのよ」とユミヨシさんは噛んで含めるように言った。
「君は知らないんだ」と僕は言った。
「この世界ではなんでも起こりうるんだよ。なんでも」
失われた心の震えを回復するために、「僕」は様々な喪失と絶望の世界を通りぬけていく。
渋谷の雑踏から、ホノルルのダウンタウンまで。
そこではあらゆることが起こりうるのだ。
羊男、美少女、娼婦、片腕の詩人、映画スター、そして幾つかの殺人。
華麗にそしてハードに、運命はそのステップを踏みつづける。
メモ
「踊るんだよ」羊男は言った。
「音楽の鳴っている間はとにかく踊り続けるんだ。おいらの言ってることはわかるかい?踊るんだ。踊り続けるんだ。なぜ踊るかなんて考えちゃいけない。意味なんてことは考えちゃいけない。意味なんてもともとないんだ」。
村上春樹の小説の中で、僕が最も好きな作品だ。
「僕」の周りで起こる様々な出来事。
本当に様々な出来事。
「僕」は踊り続け、ある結論に達する。
物語の中では様々な出来事が起こるが、そこに描かれているのは「僕」の精神世界だ。
ぜひいつかは読んで欲しい名作。
でも、最初に読むのはやめよう。
冒頭の100ページ位がちょっと退屈で、続きを読まなくなってしまうと思うから。
国境の南、太陽の西
1992 講談社
お薦め度 ★★★★★★★☆☆☆
内容紹介
一人っ子として、ある欠落感をもっていた始に、小学校時代、同じ一人っ子の女の子の友達が出来る。
25年後、37才の時、2人は再会し、激しい恋におちる――。
メモ
痛み、が強く感じられる恋愛小説。
読みやすいが、結末はなかなか、痛い。
ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささぎ編
1994, 1995 新潮社
ねじまき鳥クロニクル〈第2部〉予言する鳥編
1994, 1995 新潮社
ねじまき鳥クロニクル〈第3部〉鳥刺し男編
1994, 1995 新潮社
お薦め度 ★★★★★★★★☆☆
内容紹介
僕とクミコの家から猫が消え、世界は闇にのみ込まれてゆく。
―長い年代記の始まり。
第1部
ねじまき鳥が世界のねじを巻くことをやめたとき、平和な郊外住宅地は、底知れぬ闇の奥へと静かに傾斜を始める…。
駅前のクリーニング店から意識の井戸の底まで、ねじのありかを求めて探索の年代記は開始される。
第2部
猫が消えたことは、始まりに過ぎなかった。
謎の女はその奇妙な暗い部屋から、僕に向かって電話をかけつづける。
「私の名前を見つけてちょうだい」。
そして僕が不思議な井戸の底で見いだしたものは…。
第3部
僕は少しずつ核心に近づいている。
猫は戻る、笠原メイは遠い場所から手紙を書き続ける、間宮中尉はもうひとつの秘密を打ち明ける。
ねじまき鳥に導かれた謎の迷宮への旅。
第3部完結編。
メモ
姿を消した妻のクミコを「僕」が探す。
その途中で様々な出来事が起こる。
それぞれの出来事はそれぞれに何かを暗示している。
その謎は第3部で解き明かされる。
色々と考えを巡らせながら読んでしまう小説だ。
スプートニクの恋人
1999 講談社
お薦め度 ??????????
内容紹介
22歳の春にすみれは生まれて初めて恋に落ちた。
広大な平原をまっすぐ突き進む竜巻のような激しい恋だった。
それは行く手のかたちあるものを残らずなぎ倒し、片端から空に巻き上げ、理不尽に引きちぎり、完膚なきまでに叩きつぶした。
そして勢いをひとつまみもゆるめることなく大洋を吹きわたり、アンコールワットを無慈悲に崩し、インドの森を気の毒な一群の虎ごと熱で焼きつくし、ペルシャの砂漠の砂嵐となってどこかのエキゾチックな城塞都市をまるごとひとつ砂に埋もれさせてしまった。
みごとに記念碑的な恋だった。
恋に落ちた相手はすみれより17歳年上で、結婚していた。
更につけ加えるなら、女性だった。
それがすべてのものごとが始まった場所であり、(ほとんど)すべてのものごとが終わった場所だった。
メモ
まだ読み終えていないので、また今度に書きます。
海辺のカフカ (上)
2002 新潮社
お薦め度 ★★★★★★★☆☆☆
内容紹介
15歳の誕生日、少年は夜行バスに乗り、家を出た。
一方、猫探しの老人・ナカタさんも、なにかに引き寄せられるように西へと向かう。
暴力と喪失の影の谷を抜け、世界と世界が結びあわされるはずの場所を求めて。
メモ
物語は二つのパートに別れて進行する。
奇数章では、15歳になったばかりの「僕」が中野区の家を出て、一人で四国に向かい、高松の私立図書館で暮らすようになる。
「僕」はその図書館で大島さん、佐伯さんといった人物と出会い、深い森の奥へと踏みこんで行く。
偶数章ではナカタさんと星野青年の物語が進む。
かつて識字能力を影の半分とともに失ったナカタさんは、少年の後を追うように中野区から四国へ向かう。
星野青年の助けを借りながら、ナカタさんは次第に少年の足跡に近づいてゆく。
この小説では、上記のように二つの物語が対比して語られる。
そして、終盤で二つの物語が交錯する。
「僕」の精神世界についていろいろと考えさせられる小説だ。
しかし、終盤の展開の性急さは少しいただけないと思う。
アフターダーク
2004 講談社
お薦め度 ??????????
内容紹介
真夜中から空が白むまでのあいだ、どこかでひっそりと深淵が口を開ける。
マリはカウンターに置いてあった店の紙マッチを手に取り、ジャンパーのポケットに入れる。
そしてスツールから降りる。
溝をトレースするレコード針。
気怠く、官能的なエリントンの音楽。
真夜中の音楽だ。..(本文より)
メモ
まだ読んでいないので、また今度に書きます。